令和6年10月
やっと猛暑も影を潜め、秋の気配が感じられる今日この頃です。いかがお過ごしですか。
このところはまっているユーチューブがあります。「ゴミ屋敷パートナーズ」と言い、名前の通りゴミ屋敷をひたすらきれいにする動画です。最初にこれを見た時、よくもまぁこんなにゴミを溜められるな、というのが率直な感想でした。とにかく凄い、ペットボトル、弁当のがら、大量の酒瓶、服、布団、吸い殻、何か分からないもの…等々、部屋中がありとあらゆるゴミで埋め尽くされています。その大量のゴミを、仕分けしながら撤去するのです。物件によっては玄関も完全にゴミでふさがれており、簡単には中に入れません。時には10年20年にも渡り、ゴミが踏み固められカチカチで、スコップを使うなどまるで土木作業です。ここで生活するの?信じられませんが、多くの場合人が住んでいるのです。基本的には、一人暮らしの男性が多いようですが、中には女性もいました。一体どんな人生を送ってきたのか、そしてこれから送っていくのか、思わず想像を巡らせてしまいます。
以前、物があふれどうしようもなくなった家を、きれいに片付ける「週末ビフォーアフター」という動画の話をした事があります。それを見るたび自分の事は棚に上げ、よくもこれだけ散らかせるなとつぶやくのですが、最後は驚くほど見違えるので、希望と満足感があります。ところがゴミ屋敷の多くは、底の見えない井戸を覗くような感じなのです。
人類が文明を持つ1万年以前、人間は小集団にわかれ遊動生活をしていました。それは数百万年にも渡り、ごく身近な仲間だけの生活をしてきたわけです。それが、心の安心安定を生み出しました。ところが多くのゴミ屋敷の住人は、好むと好まざるとに関わらず、長期に渡り一人の生活を続けているのです。それは一体どんな心持ちだったのでしょうか。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)のこんな実験結果があります。 ① 手をつながない ② 親しくない人と手をつなぐ ③ 親しい人と手をつなぐ 以上の3つの条件を設定し、それぞれに同じストレスをかけ、どの条件が最も安心をよぶかという実験です。言うまでもなく、③番が最も安心を得られました。ここからも分かるように、私たちは親しい人といることによって、心の安泰が得られるのです。おそらくゴミ屋敷に住む人たちには、そんな気持ちを分かち合えるような親しい人は、いなかったのではないでしょうか。
幸せな家庭はみな似ている、と文豪トルストイは言いました。その理由に人類は進化の過程で、ごく身近な人との生活から、心の安心を得た事があげられます。つまり私たち人類は、安心を得る為の共通体験を持っているのです。だから親しい人と一緒にいる事が、幸せな家庭へ繋がり、みんなが似る事になったのだと思います。今回の動画を見ながらそんなことを想いました。
早川友教