令和7年2月
今年は春の訪れが早いと言われていますが、まだまだ寒い日が続いています。いかがお過ごしでしょうか。私が子どもの頃北風吹きすさぶ中、悪童は皆鼻を垂らしながら遊び回っていました。しかし今や鼻たれ小僧は絶滅危惧種です。 昭和は遠くになりにけり・・・
寒い季節は、どうしても風邪をひいたり熱を出す人が多くなります。昭和の頃、風邪や熱を出すのは気合が足りないからとか言われました。だから小学生の時(昭和3~40年代)、多少の熱なら学校に通ったものです。当時それが当たり前でしたし、休まないのは美徳だったのです。また良くも悪くも、感染症におおらかでした(当時は感染症とは言わず、体調が悪ければ何でも風邪)。風邪くらい一晩寝れば治ると言われ、実際それで治りました。
プラセボ効果(期待効果とも呼ぶ)という医学用語があります。言葉は聞いたことがなくても、おそらく皆さんも経験しているはずです。安酒でも高級な器に入っていたり、輸入牛なのに神戸牛とか言われると、何やら一段と美味しいと感じたり、同じ成分でも高価なサプリメントの方が、効果があると思ったりはしませんか。医学の実験でも頭痛に効くと言われて模擬薬をのむと、本当に痛みが収まったりします。ただプラセボ効果にも限界はあり、実際の腫瘍などには効きません。しかし現代医療を、プラセボ効果抜きに語れません。腫瘍に効果は無くても、痛みや吐き気、不快感等の緩和(個人差有り)に役立つからです。
このプラセボ効果は、元々人類が進化する中で獲得した、生き残りの手段と言われます。人類が何百万年にも渡り、厳しい生存競争を勝ち抜いてきた理由に、情報の収集に長けたことが挙げられます。豊富な情報を駆使し身を守ったのです。ところが多くの情報を逐一選別していると時間がかかり、襲いかかる危機一髪に対応できません。そこで脳は、経験や知識を土台に「型」を作りました。その「型」が各種情報をまとめて判断し、結果だけを認識するのです。これがプラセボ効果に繋がりました。経験則から同じ様な状況下では、同じ結果が得られると判断します。それが神戸牛と言われると無意識に、美味しいと思う理由です。だから私たちは今でも、何かにつけ見返りの良さそうな方を選んでしまいます。
通常プラセボ効果は大人を対象とします。何故ならプラセボ効果には説明が必要となり、言葉や知識の理解が不可欠だからです。とは言え、子どもにもプラセボ効果は見られます。それが「代理プラセボ」です。言葉以上に、大人の社会的信号(言語、音声、視線、ジェスチャー、態度等の情報)が影響します。しかし単純に「代理プラセボ」が良いとは言えません。子どもは大人の期待により行動が左右されます。しかし、その期待が常に子どもにとり、相応しいものとは限らないからです。それが親子のすれ違いを生んだりします。
ところであの時食べた神戸牛は、本当に神戸牛だったのか、まぁ美味しいとは思ったので、そうだと信じますが・・・