令和7年11月
束の間の秋 ミャクミャクが大人気となった2025年、生成AIの利用がグンと増えています。わからない事もていねいに教え、相談事には優しくこたえ、書類仕事をこなせば新しい提案もしてくれる、果てはAIと結婚する、私たちはそんな世界を生きていきます。
突然ですが「おばあちゃん」と聞いて、なにを思い浮かべますか。私が子どもの頃(昭和30~40年代)家族3世代の同居は当たり前、祖母の姿は日常の一部でした。が、今はそうではありません。3世代同居は少数派、おばあちゃんの姿はいっしょに出かけた、プレゼントをもらった等、非日常的な場面と重なることが多いと思います。しかしその一方、世代を超え「おばあちゃん」の響きには、共通した想いもあるのではないでしょうか。
この「おばあちゃん」ですが、実は人間以外の動物には存在しません。確かに血縁的な意味での祖母はいます。が、人間のおばあちゃんのような存在ではありません。その理由は子育てにあります。人と同じ仲間である類人猿(チンパンジー、ゴリラ、オランウータン)は、母親だけが子育てをします。ところが人間は違います。何か特別な事情があれば、母親に代わっておばあちゃんは子育てをします。頼まれれば一日中でも孫の面倒もみます。園や習い事の送り迎えだってします。人生の知恵や経験を伝えたり、家族の心身にわたる支えにもなります。人間のおばあちゃんは、子育てを担う最も重要な家族なのです。このように信頼して我が子を託せる「おばあちゃん」は、他の動物には見当たりません。
なぜ人間だけに「おばあちゃん」が存在するのでしょう。人以外の類人猿は、通常生殖期間の終了とともに寿命を迎えます。又、普通3世代が同じ場所では棲みません。ところが人間だけは、閉経後も家族と共にその後を生きていきます。現在人類は80億を超えますが、この繁栄?の理由の一つが「おばあちゃん」なのです。人以外の類人猿は一度出産すると、次の出産まで数年の空白期間が生じます。それは子どもが一人前になるまで、母親がつきっきりになるからです。次の子を産む余裕がありません。ところが人間は毎年でも出産できます。それは「おばあちゃん」が、子育てを手伝ってくれるからです。他の類人猿が数年に一頭しか増えないのに、人は毎年でも増えていきます。又類人猿は基本的に一頭しか出産しませんが、人間は双子などの多子出産も可能です。こうして人類は、現在のような繁栄を遂げたのでしょう。おそらく人類の祖先も元々は、他の類人猿と同じような生態だったと考えられます。しかしたまたま長命の一頭が、何らかの理由で母親に成り代わり、子育てをしたのかもしれません。それが生存競争に有利に働き、今に至ったと考えられるのです。
こうしてみると人類における「おばあちゃん」は、現代のAIと通じるようにも見えます。しかし実際はAIを遥かに超える存在なのです。世代を超えて感じる「おばあちゃん」の懐かしさの裏には、こんな人類の秘密が隠されていました。これを「おばあちゃん仮説」と呼びます。私は仮説ではないと思うのですが、現役のおばあちゃんはいかがお感じでしょうか。
早川友教
