『 聞く会話 』 

令和6年11月

 この期におよび、ようやく秋を感じられる今日この頃です。しかし、あの爽やかな日本の秋は、どこへ行ってしまったのでしょう。今子育て世代のお母さんお父さんは、様々な気づかい、配慮、工夫等のいる時代の真っただ中です。そんな中で皆さんは、何を大切にしながら子どもと向き合っていますか。多くの親の一番の願いと言えば、我が子の幸せにつきると思います。そのために日々努力していることは、いろいろあるに違いありません。 

 当たり前ですが、子どもは親を選べません。これは親が思う以上に、その影響力は大きいということです。しかしだからと言って親は常に正しい事だけをし、真剣に子どもと向き合わなければ、と考えるのもどうかと思います。何事もこだわりは必要かもしれませんが、それに囚われてしまうと問題も起きるのです。ぼちぼちやれば良いのです。 

 子育ては、決して特別ではない日常の積み重ねだと思います。誕生日や正月、クリスマスなどの非日常も大切ですが、それは子育ての一部に過ぎません。それよりもまず、いかに毎日を過ごすのかが問題でしょう。しかし慌ただしい日々の中で、子どもにとって何が大切かなどという事を、いつもは考えていられません。だからこそ機会を見つけ、それを意識することが、また新たな気づきに繋がるように思います。 

 先日、たまたま奥さんと子育ての話題になりました(我々の子育てなんて、かれこれ3~40年も前のことです)。その当時、何を大切に子育てをしていたかというと、母親としてはいっしょにご飯を食べる事と会話する事、その二つを心がけていたと言います。どちらもよくある日常の一場面でしょう。我が家の子育てが、正しいとは言いませんが、こんな事からも子育ての本質は、日常にありと言えるのではないでしょうか。 

 生きる基本は食にあります。しかし会話も、人が人間として生きるためには必要不可欠なものです。そもそも会話には、言語だけでなく表情や距離感、スキンシップ等の非言語要素が含まれます。又、互いに言葉を交わし合う、会話のキャッチボールも必要です。誰かが一方的に話すだけでは、会話とは言えません。しかし、そんな会話?が必要な場合があります。大人と子どもが会話する時です。例えば親子の会話の中で、気が付けば親の経験や考えを、一方的に子どもに話してはいませんか。親や先生と言われる人は何かにつけ、子どもにしつけや教えを垂れがちです(それは責任感の裏返しでもありますが)。すると子どもは自分の想いがあっても、大人の考えを優先してしまいます。子どもは常に大人の顔色をうかがうのです。だから大人が意見を表す前に、まず子どもの話しを聞く姿勢が大切だと思います。聞くということは、あなたをしっかり受け入れていますよ、あなたに関心を持っていますよ、そんな想いを子どもに伝える事になるからです(無論TPOは必要ですが)。もし少しでも大人が、子どもの話に耳を傾けていけるのなら、子どもとの信頼関係が拓かれるように思うのです。 

早川友教