「 鉄は熱いうちに打つな! 」

 秋本番、空を見上げればひつじ雲、夜も過ごしやすくなってきました。感染者は減少していますが、重症・中等症者はまだ予断を許しません。緊急宣言は間もなく明けそうですが、これが最後とはいかないでしょう。引き続き体調にはお気をつけ下さい。

さてこのタイトルを見て、あれっ違うと感じた方は、多いと思います。そうです、普通は打て!です。何故打つな!なのでしょう。

現在小学2年生の孫が、幼稚園の年中の頃の話です。劇の発表会があり、孫は野原の草花の役で出演することになりました。当日は両親をはじめ、大勢の人たちが見守っています。全員、我が子の演技を見逃してはならぬとスマホを構えます。しかし結局、孫に動画は必要ありませんでした。なぜなら劇の間、微動だにしなかったからです。他の子ども達は、一生懸命演じているのですが、一人不動の姿勢で、セリフも言わず、まばたきもせず、ただ固まっていたのです。おそらく緊張の極にいたのでしょう。もう一人、劇中ずっと背景に隠れたままも子もいました。結局当日の孫の様子は、写真一枚で事足りました。こんなタイプの子もいれば、反対にじっと出来ない子もいます。キョロキョロするは、隣の子にちょっかいをかけるは、寝転がるは、しゃべるはと、とにかく落ち着きがないのです。見ている親にすれば、もう少しおとなしくしなさい、とヤキモキするにちがいありません。

 両者の行動は正反対ですが、その原因はどちらも緊張感からの逃避です。固まっているだけなら、周囲への影響は少ないかもしれませんが(とは言っても、先生は必死だと思います)、動き回る子どもの場合、影響は大きくなりがちです。そうなれば親としても「ちゃんとやりなさい!」と雷の一つも落としたくなります。その気持ち、よく分かります。親が子どもの問題行動に、すぐ対処しようとするのは当然です。それが本来の「鉄は熱いうちに打て!」という事です。しかし雷を落とす前に、ちょっと考えてほしいのです(ただし年齢や状況によって違います)。果たして子どもは、何故自分が怒られているのか、その理由と原因を分かっているのかという事です。「ちゃんとやりなさい!」と怒られれば、一応「はい」の返事はするでしょう。しかし返事をしたからといって、二度と同じ事をしない訳ではありません。そもそもの原因を解消しなければ、又同じ事を繰り返してしまうのです。だからこんな時こそ、子どもの問題行動の理由と原因を探り、それを克服する方法を教える事が必要なのだと思います(心理学では、無意識を意識化すると言います)。それが自分のものとなれば、その後の人生における様々な緊張感からも、逃げずに向き合っていけるのではないでしょうか。

親もカッカッしている時は、どうしても頭ごなしの一方的な怒り方になりがちです。子どももそんな勢いで怒られれば気持ちは動揺し、早くこの場から去りたい思いだけになります。返事はしても、親の言う事など耳に入ってきません。だからこそ「鉄は熱いうちに打て!」ではなく、時間をおいて親子が冷静になる時を待つのです。そして改めて我が子に、親の思いを伝えるのです。「お母さんはあの時、○○がこうしたら良かったと思うわ」「お母さんがドキドキする時は、こうしているの(具体的な対処法を伝える 例 深呼吸する・おまじないをする等)」というようなおだやかな会話が、親の思いをより自然に、子どもに伝えられるように思います。それが「鉄は熱いうちに打つな!」ということなのです。

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