『 木の会話 』

 11月の中頃、北花田にあるショッピングセンターに行ってきました。混雑を避けたいので、開店時間に合わせていきます。駐車場に入るのもスイスイです。ところがその日はいつもと同じ時間なのに、すでに駐車場の入場待ちの列ができていました。「あっー年末」と感じる、第八波の気になる今日この頃です。

 この時期になると、町のあちこちでクリスマスツリーが見られます。日本ではあまり見られないでしょうが、欧米の家庭では本物のモミの木を飾ったりします。今や多くの日本人にとってクリスマスは、宗教色ぬきで冬の風物詩となり、ツリーを飾りサンタクロースがプレゼントを持ってきてくれる、楽しい一日となりました。

 さて話は変わりますが、現在陸上において最も繫栄している生物をご存知ですか。それはもみの木にも代表される植物です。先日友人からメールが届きました。今熊野古道を巡っていると言うのです。私は残念ながら、まだ行ったことはありません。しかし多くのメディアで見られる、鬱蒼と立ち並ぶ木々の間をぬう古道は本当に神秘的です。最近では日本国内だけではなく、海外からの観光客にも大人気です。友人もオーストラリアのメルボルンから来た人をはじめに、何人かと出会ったそうです。

 近年この植物に、今まで思いもよらなかったような新たな事実が、続々と発見されています。皆さんは木々で蔽われた森などに入ると、誰かに見られているような感覚に襲われたりしませんか。これは決して気のせいだけではなく、植物は話をしていることが解ってきました。もちろん人間のように、音声を使って話しをするわけではありません。お互いに、様々な化学物質のやり取りを通して会話をするのです。

 それだけでも驚きですが、さらに驚くのは森の木という木は、お互いに繋がっていると言うのです。一体どういう事でしょうか。森の地中には木の根が張り巡らされています。これらの根を通して、栄養分が木全体に届けられています。実はこの根の先には、菌糸と呼ばれる細い糸状の菌が生息しています。この菌糸は、何と何十メートルにも育ち、森全体の木の根が、お互いにつながりあっているのです。近年世界中の植物の80%が、このようにつながって生きている事が解ってきました。

 こんな実験があります。プランターに高さ1メートルの木を3本、横一列に植えます。真ん中の木はそのままの状態にし、両脇の2本には光合成が出来ないよう袋をかぶせます。さらに地中を、ゴムと菌糸が通れるだけのネットの壁で、三等分に仕切ります。そして一ヶ月後、袋を取るとゴムの壁で仕切られた木は完全に枯れていましたが、ネットの壁で仕切られている方の木は生きていました。つまり菌糸がつながりあって、光合成の出来ない木を助けていたのです。近年様々な報道で取り上げられる森林破壊の恐ろしさは、地球温暖化を招くだけではなく、木々がお互いに助け合うネットワークの破壊とも言えるのです。

                               (NHK番組「超・進化論」より)

 実は人間にもこのようなネットワークが、あるとも言われています。昔より以心伝心という言葉があるように目には見えませんが、心と心がつながっているのでしょうか。しかしこの心のつながりは、便利さと引き換えなのかもしれません。世の中が便利になればなるほど、人と人との間は遠のいて行くように感じます。とは言え、これも私たちが望んだ世界でもあるのです。

 これから一年で最も慌ただしい師走を迎えます。何かと人のつながりを愛おしく感じられる時期でもあります。どうぞ和やかな年末を過ごし、穏やかな良き年をお迎え下さい。

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