『 子どもは多数から無意識に学んでしまう 』

 明けましておめでとうございます。毎年年頭に際し、穏やかな一年であってほしいと願うのですが、今まで叶ったことがありません。せめて気持ちだけでも、安らかに過したいものです。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて日々子どもと関わっていると、思いがけない行動に困惑することがあります。例えば、不適切な言葉遣いをするような時です。多くの場合、周囲の反応見たさが大きな理由ですが、中にはそうではない時があります。それは教えられてもいないのに、社会の価値観などを無意識に学び、それに従って行動する時です。そんな行動は不適切だからと言って、改めようとしても簡単には変えられません。何故なら知らずに身につけた価値観は、無意識なだけに根が深く、直観と感情に左右されるからです。例えば人種差別です。教えられて学ぶ場合は、自分でも教えられているという想いもあり、ある程度自覚的・意識的感覚が持てます。だから後々理屈によって、その価値観を変える事も容易なのです。

スーパーマン、バットマン、スパイダーマン、ワンダーウーマン、キャプテンアメリカ…等、アメリカには日本でも有名な、コミックヒーローやヒロインが数多くいます。実は上記のキャラクターに共通する点があります。何だと思いますか。それは全員が白人だという事です。今でこそ黒人のヒーローもいますが、その多くは今でも白人が主役です。すると子どもたちはこんな所から無意識に、白人が正義の味方であり、黒人などは違うと考えてしまうのです。教えられたわけでもないのに、子ども自身がそうとらえるのです。それは白人の子だけではなく、黒人の子も同じように感じ取ってしまいます。今では黒人をはじめ、多人種のヒーローやヒロインがいます。白人だけが正義の味方とは、言っていないにもかかわらず、子どもにはそう見えるのです。これは育て方に問題ありというような事ではなく、人間の本質として考えるべき問題だと思います。何故子どもは知らず知らずに、そのような物事のとらえ方をしてしまうのでしょうか。

人類は約700万年前に、サルから分かれ人間へと進化し始めました。過去には30種近い人類がいました。が、現在残っているのは、約10万前に現れた我々ホモサピエンスだけです。進化の過程では、飢餓と捕食者からの逃避が、常に最大の関心事でした。すべての人類は、毎日が危機との背中合わせだったのです。そんな中で、何とか生き残るための最善の方法が、多数に従うことでした。一人でいるよりも大勢でいる方が、食料の調達にしても、身を守るにも効果的だったからです。これはおそらく、人類がまだサルだった頃から持っていた本能だったでしょう。我々はその本能に磨きをかけ、生まれながらに多数派を見極め、それに従う行動を身に付けたのです。だから簡単に様々な情報が得られる今でも、我々は多数派に安心感を覚えてしまいます。それが教えられなくても、子どもたちは無意識に学んでしまう理由なのです。

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