夏になると地球温暖化が大きな話題となります。しかし、それにしても今年の暑さは酷い!!エアコンなしの生活は考えられません。温暖化の原因は様々ですが、二酸化炭素の排出(その7割が先進国のもの)が、一番の原因と言われます。ところがそれは、まさにエアコンに代表されるような、便利で近代的な生活との引き換えです。便利さには各種のエネルギー(電気、ガス、石油等)が必要ですが、そのエネルギーを作り出すのに、又膨大な二酸化炭素が排出されるのです。
ところで温暖化と子育てには、共通点があるように思います。つまりより良い状態を求め一生懸命努力すればするほど、自分たちが苦しくなる事です。温暖化は分かるが子育てが何故?と思った方は多いかもしれません。今では父親も積極的に、子育てをするのも当たり前の時代となりました(昭和に比べれば)。又シングルで子育てに励んでいる方も大勢います。いずれにしても保護者の皆さんは、我が子の幸せを願い一生懸命に子育てをしています。ところが反対にそんな努力が、親子間に亀裂を生じさせる時もあるのです。
私が育った昭和30年代の子育ては、どこでも似たり寄ったりでした。生活水準も大して変わらず(今から見れば、皆貧しかった)、伝統的価値観もまだ共有されていました。父親は仕事、母親は家庭とはっきりした役割分担があり、3世代が同居、子どもも多く、プライバシーなんてありません。現在の少子化の親子関係とは、大きな隔たりがありました。一方家の外には、今ではなくなってしまった、子どもだけの世界が広がっていたのです。
ところが、物が豊かになるにつれ価値観は多様化し、両親が仕事もすれば家事もする、さらに核家族化、少子化の現在です。それらが相まって、子育ては迷走を始めました。特に母の悩み(育児は、どうしても母親の比重が重い)は、大きくなりました。昭和の頃なら隣と同じ様にやるか、自分の親と同じ子育てをしていれば、大きな問題はありませんでした。ところが今では(極論ですが)、人それぞれに価値観があり、誰もが自分流の子育てをしています。親は悩みながら自分で考え、SNSや育児書等を参考にして我が子を育てています。ただそれではどうしても、実感がともわない理屈の子育てになりがちです。さらには情報量の多さが、より親を惑わせます。だからあふれかえる情報の中で、ある理論が子どもは健やかに育つと言えば、それに頼りたくなるのは人情です。しかし、これが落とし穴になります。何故なら育児理論の多くは、欧米から導入されました。その理論はキリスト教を背景とする、一神教文化の思想です。ところが日本は、神ではなく人間関係によって成立する社会です。そもそも社会を成立させている文化が、根本的に違うのです。親子関係にしても、似て非なるものと言えるのです。だからどうしても海外の理論は「付け焼き刃」になります。すると問題になるのが、子育てに一貫性が欠ける事です。親は良かれと思い、欧米流の子育てに取り組みますが、どうしても理論と実際が合わない事も増えてきます。それも何の不思議はありません。日本で育った親が欧米の理論で子育てをしても、考えている事とやっている事がぶれてくるのは当然でしょう。その結果子どもは混乱し、親子間に亀裂が生じるのです。
子を想う親の気持ちは、何ものにも代え難いと思います。その実現に様々な子育てを参考にするのは、決して悪いことではありません。しかしそれなりに一貫性のある子育てには、人間関係に根ざす日本の伝統的な子育てが、良いように思うのです。