令和8年10月
10月の声を聞き、ようやく夏日も終わりを告げそうです。 秋は短くなりにけり
さて子育てする中でも最大の関心事と言えば、我が子の健康と安全ではないでしょうか。親はそのために様々な気配り心配りをします。我が子が泣いている、大変だ!すぐ解決しなければ。元気がない、大変だ!すぐ医者に連れて行かなければ…等々。実際はこんな大げさではないにしても、その場その時に応じて親は良かれと思う行動をとります。
突然ですがブラジルのアマゾンと聞いて、何を思い浮かべますか。おそらくアマゾン川やジャングルでしょう。いずれも世界最大規模を誇ります。このアマゾンに「ピダハン」と呼ばれる人たちが住んでいます。このピダハンは、その独特な言葉によって言語界では有名な存在です。その上彼らは、私たちには信じられない子育てをするのです。例えば幼児が鋭い包丁を振り回していても取り上げません。焚火のそばをよちよち歩いていても、火から遠ざけません。さらにはタバコも吸わせるし酒も飲ませます(日常的ではありませんが)。子どもは乳離れすれば、もう大人の感覚なのです(どうも私たちの子育て観が当てはまるのは、彼らの3歳くらいまでのようです)。これを聞けばエッー!と思うでしょう。我々の感覚では到底理解できません。しかしそれもこれもピダハンの人生観や世界観が、根本的に違うからです。そもそも彼らは私たちのような、過去に囚われ未来に慄く人生ではありません。悔恨、不安、心配というような言葉はなく、その日その時を幸せに感じる人生なのです。それは彼らに、危険や心配事がないからだと考えるかもしれません。ところがそれどころか、日々死と隣り合わせの生活を送っています。身の周りには、肉食獣のジャガーやアナコンダのような大蛇がいます。主食の魚や水を調達する川にはピラニアやワニが棲み、マラリアを媒介する蚊を初めとし、様々な吸血昆虫が襲いかかり、猛毒を持つ生物はそこかしこにいます。病気になっても医者はおらず、けがをしても薬はありません。死は生活の一部なのです(平均寿命45歳)。だからこそ、我々には信じ難い彼らの子育てがあるのです。
「転ばぬ先の杖」という諺があります。問題が起きる前に予め備えるという意味です。自然災害の多い日本では大切な考えでしょう。しかしこと子育てに関してこれが過ぎると、子どもの成長が損なわれる時があります。人生は問題解決の連続です。近頃その対応力が、失われているように感じます。原因の一つが、子どもが問題と向き合う前に、親が片付けてしまうことです。親の心配する気持ちは分かります。しかし親が解決していては、いつまで経っても子どもの成長はありません。大切なのは、見守りながら支えることだと思います。一昔前には考えられない事の多発する現在です。だからこそ子どもは自分で問題を克服する力が、より求められるのだと思います。そういう意味ではピダハンの子育てを、見習うべきなのかもしれません。 早川友教
※もし興味があれば、みすず書房の「ピダハン」を読んでみて下さい。
