『 問題行動とスキンシップ 』

 ビートルズの代表曲に「ザ・ロング&ワインディングロード」という曲があります。知らない方もイントロを聴けば「あーこの曲か」という人は多いと思います。タイトルを直訳すれば、長く曲がりくねった道という意味です。改めて考えてみると、これって子育てそのものかもしれません。あっちで悩みこっちで悩み、曲がりくねった道を進むのですから。

頭を悩ませる代表に、子どもの問題行動があります。例えば乳幼児期のかみつきです。そこで今回、平成19年(2007年)夏季園だよりを紹介したいと思います。

『体感温度』

夏になると、しばしば家庭や職場でいわれなき文句をつけられ閉口します。何に? 暑がらないことにです。暑いのと寒いのではどちらが良いかと言えば、ちゅうちょなく暑い方 を選びます。別に暑くないわけではなく、皆と同じように夏は暑いのですが、どうも感じ方が違うようなのです。年がら年中Tシャツで OKの隅井・前川・久代先生とは、少なく見積もっても体感温度が10度は違うでしょうか。

さてこんな夏の暑さでも、子供たちはピッタリくっついてきます。中には先生の身体に溶け込んでしまうかの様な密着型の子供もいます。正にスキンシップの王道です。そもそもスキンシップというような言葉のなかった時代から、子供は親(特に母親)の肌のぬくもりに安住の地を求めていました。アソカでもまだ園に十分なれていない春のふれあいデーは、親子のスキンシップが競技の中心です。年令が下がれば触れ合う機会も多いでしょうが、年長くらいになるとそんな機会はぐっと減ります。だから、年長さんがおんぶやだっこをされた時の嬉しそうな顔が、毎年印象に残ります。親にすれば年長ともなれば、お兄ちゃんお姉ちゃんなのだし、体も大きくなるので、自然とスキンシップから遠ざかるのだと思います。ただ改めて考えると、年長と言ってもまだ生まれて5年ほどなのです。

日本は欧米などとは違い、社会の土台を宗教(キリスト教)ではなく、人と人とが直接結びつく人間関係に置いています。そしてこの人間関係を築く上で大切なものが「甘え」なのです。しかし戦後欧米の教育方法がもてはやされ、乳幼児期の早い時期から自立を目指すことになりました。その為、甘えは何かにつけ否定的にとらえられる様になりました。ところがこの甘えこそある意味、日本社会の根幹と言っても過言ではありません。この根っこを否定してきたのですから、人間不信にあふれた現状も当然と言えば当然です。だからこそ今、甘えはより重要(ただし乳幼児期の適正な範囲において)になるのです。

一口に甘えと言っても多種多様です。スキンシップはその中で最も大切な物の一つです。 子供(健常児・障害児を問わず)はスキンシップを通して、親から愛されている事を認識するのです。それが心の安定につながり、様々な困難にも立ち向かえるのです。アソカではだっこやおんぶはごく普通の行動です。しかしそれを自ら求めてくる子供はいいのですが、本当はしてほしいのに、それを出せない子供もいます。皆さんの子どもはどうですか。親子関係に自信のあるお母さんも、何気なしにスキンシップをするのではなく、今一度意識してやってみてはどうでしょう。1日1回でいいのです。子供はきっと心から嬉しいと感じてくれるにちがいありません。続けることによって又新しい親子関係が生まれるかもしれません。

体感温度(自分の感じ方)は人によって全く違います。くれぐれも自分の体感温度だけが、正しいと思わないことで しょう。

以上が、当時のお母さん方に伝えたかったスキンシップの話です。このスキンシップという言葉、実は欧米では使いません。しかし日本ではよく聞かれます。親子が肌を触れ合う事により、子どもに安心や信頼感が生まれ、情緒も安定するのです。又、親自身にも愛情ホルモンと言われるオキシトシンが活発に分泌され、不安やストレスが解消するのです。

子どものかみつきを見ると、考えてからかむのではなく突然かみます。言わば本能的行動なのです。このような行動には言葉ではなく、本能に直接的に働きかける方法が必要だと思います。それがスキンシップなのです。スキンシップによって得られる情緒の安定が、かみつきや様々な問題行動の解消に繋がると考えられるのです。

スキンシップは問題行動の解消だけではなく、親子の信頼関係を深めるためにも、積極的にやってみると良いのではないでしょうか。

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