令和8年7月
学童の小学生が「今日、日直やってん」と言いながら帰って来ました。日直ありました60年前にも。その日は少し早く登校し、黒板に給食当番や掃除の班の名前など書いていました。黒板と言えば爪でひっかき、背中がぞわぞわとする「キーッ」という音を立てた事はありませんか。おそらくほとんどの人が経験したことでしょう。調子乗りの男子(私もこの一員でした)はこの音をわざと立て、みんなの嫌がる顔を見て喜んでいました。
実はこの神経を逆なでする音には、人類の進化が関わっているのです。この音を調査するとチンパンジーが危険を察知し、仲間に知らせる叫び声と似ている事が分かりました。チンパンジーと人類は、祖先を同じくする霊長類です。おそらく私たちの祖先も、危険が迫れば同じような声を上げ、仲間に知らせていたのでしょう。この音は私たちに身の危険を呼び起こすのです。だから「キーッ」を聞くと、思わず背中がぞわぞわしてしまいます。何百万年の進化を経てなお残る本能なのです。裏を返せばこの音があったから、私たちは今も生きているのでしょう。毛嫌なんてもってのほか、いくら感謝しても感謝し過ぎる事はないのかもしれません。とは言え、誰もあの音を好き好んで聞きたいとは思えませんが・・・。
さて現在世界人口は80億を超えます。一見我々は繁栄しているように見えます。しかしコロナの頃、人類の存亡さえ取り沙汰されていました。実は私たち現生人類は、生まれてこの方ずっと存亡の橋を渡っています。その理由が人類の多様性の無さです。多様性?人種は多彩だし、地上のあらゆる場所に適応している、多様性がないわけないと思うかもしれません。ところがそれは単なる見かけに過ぎず、遺伝子レベルでは無いのと同じなのです。その原因は80億の人間が、わずか1200人ほどの祖先の子孫だからです。人類の仲間は少なくとも20数種類(例 ネアンデルタール人等)確認されています。しかし今では我々ホモ・サピエンスが唯一の人類なのです。遺伝子に多様性が無いと、危機対応の選択肢が限られます。一方多様性があれば選択肢も広がり、生き残る可能性が拡大するのです。
どうやら私たちは、史上初めて且つ最終の局面にいるようなのです。その局面とは人類の増加率が、減少に向かっている事です。地球に生まれた生物は、増加から減少へと皆同じ道をたどります。人の増加率が最高だったのが1964年(第一回東京オリンピックの年)、当時世界人口は30億でしたが、人口爆発が叫ばれていました。それが今では80億です。まだもう暫くは増加する見込みですが、減少率がこのまま進めば、2300年頃には10億になると言われています。それどころかある研究によれば、人類は一万年以内に絶滅の可能性さえあるそうです。これをどう考えるかは人それぞれでしょう。しかし、祖先が「キーッ」と叫んでいたのが数百万年前、それを思えば残された時間は少ないのかもしれません。
子どもたちはどんな世界を生きていくのでしょうか。それを決めるのは今を生きる大人の責任なのです。 早川友教
